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9月の音

風のない真夜中は、小さい音が浮かび上がるようにはっきりと聞こえる。
冷蔵庫の動作音、エアコンの動作音、隣の部屋の鼾、カサッという何かの音。
昨夏にネズミの来襲を受けてからだろうか、うまく眠れなくなった気がする。とくに夜明け前、一度目が覚めてしまったとき。
しばらく頑張ってみて無理そうなときは、あきらめて耳栓を手に取る。ズズズ、と耳の穴が塞がって世界が遠くなる。完全には遮断できないけれど、小さい音はだいぶ聞こえなくなる。
少しの安堵と不安を抱いて、私はもう一度目を瞑る。

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