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9月の雪
一緒に雪を見たことはあっただろうか。ふとそんなことを思う。
出身地が近い彼とは、それぞれ嫌というほど雪を見てきたのは確かなのだけれど、一緒に見たことがあったかどうかは定かではない。
ただ、イメージとしての雪は何度も、一緒に見てきたと思う。見えているものが違ったとしても、同じ雪を見ようとしたことは確かなのだ。そして、その不確定な確かさだけが、記憶のなかで固く小さく、光る石として残る気がする。
そのこころの奥深くの暗がりに降る雪を想像する。わたしが想像することしかできない、9月の雪。
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